転職理由で言っていいこと悪いこと|3回転職した私が見た企業の本音

転職の理由って、どこまで正直に話すべき?ポジティブにしないとダメなの?

すでに転職を決意して、面接を受けようと準備されていると思います。

もちろん、事前にしっかり準備して当日は返答に詰まらないようにすることが大事です。

ですが。

立派な転職理由を考えよりも、まず企業に「言っていいこと・悪いこと」なのかを見極めることが大事です。

少し厳しいことを言わせてもらうと、面接はあなたの「発表会」ではないのです。

いい転職理由が思い浮かばない・・と「創作」するものではないのです。

3回の転職を経験した私が、実際に企業との面接のやりとりで感じたことをもとに、「転職理由であなたの評価を落とさない」方法をお話します!

1.企業はなぜ「転職理由」を聞くのか?

新卒で受ける「志望動機」にあたるのが、転職で受ける「転職理由」です。

新卒の面接ですと「いかに企業を研究し、立派なことをいえるか」という頑張りの部分が評価してもらえます。

転職の場合は、面接官にいかに「マイナスのイメージ」を払拭させられるか?がポイントになります。

●この人は、すぐに文句を言ったりしないか?
●辛いことがあると、すぐに逃げ出したりしないか?
●社内の人間と、円滑にやっていけるか?人間性は大丈夫か?

採用することで起こる「会社のデメリット」がないかをまず考えます。そのうえで「自社の戦力になりそうか?」という判断をするのです。

転職を肯定する意見もありますが、「社会人生活に、少しつまづいた人かな?」という見方をされるのが企業側の人事のホンネなのです。

転職の面接は「マイナス」からはじまるものだということ。そこを払しょくするための「転職理由」だということは、意識しておいた方がよいかもしれません。

2.転職理由を伝えるときのポイント

転職理由は、あなたの想いを伝える場ではありません。企業側が、何を判断したがっているのか?という他社視点がとても重要です。

転職理由の具体的な中身をお伝えする前に、転職理由を通じて「面接官に、あなたがどんな人間だと伝えるのか」という『ゴール』を明確にしましょう。

●前向きな人間であること

●謙虚さも、持ち合わせている人間であること

「転職理由」を通じて、企業側に伝えるべきことはこの2つです。

前向きな人間であること

企業側が一番心配するのは「辛いことがあると、すぐに辞めないか・文句ばかり言わないか」というところです。

「前職を辞めるのも、辛いことから逃げたかっただけなのでは?」という思いが面接官には少なからずあります。

「うちの会社に来れば、ゆったり余裕を持って働けるよ」などという、甘い会社はありません(実際には存在しますが)。

「会社の中で、多少の辛いことがあっても乗り越えられる人」を企業は求めます。

もっと仕事を頑張るために、前向きな選択をした

という面を、転職理由で感じさせなければならないのです。

謙虚さも、持ち合わせている人間であること

面接となると、自分の良い面だけを出してアピールをいかにするか、と考えている人も少なくありません。

もちろん前向きさは大事ですが、同時に「謙虚さ」もにおわせておくことが大事と考えます。

なぜなら、企業側が心配するのは「この人は、社内の人間とうまくやっていけるか?」という部分でもあるからです。

あまりに「自分が自分が」となって協調性がなかったり、傲慢で周りの人間に気を遣わせないか?という点を懸念します。

「転職する理由はしっかりあるが、自分も反省すべき・改めるべきところはある」ことをにおわせるようにすると、企業側は安心します。

3.転職理由で言っていいこと、悪いこと

まず大事なのは、「自分をどう魅せるか・感じてもらうか」というゴールを意識すること。

その上で、具体的な転職理由について、話す内容を考えると「ぶれずに」企業側の求める転職理由になるでしょう。

ここで注意しておきたいのは、転職理由で”言っていいこと”と”悪いことがある”ということです。

いくら自分が伝えたいことがあっても、「言って悪いこと」があれば他の理由を考えるべきなのです。

具体的に、見ていきましょう。

言ってはいけない転職理由

■ 人間関係のこと

「仕事をいくら一生懸命やっても、上司が認めてくれなかった」
「職場の人間関係が、ギスギスしていた」
「特定の人が仕事をしなくて、自分にばかり仕事が回ってきた」

など、実際にそれが直接の転職理由であっても、言ってはいけません。他の理由を考えましょう。

人間関係でうまくいかないから、転職というのは企業側もいい顔はしません。なぜなら、どこの職場でも人間関係の問題はあるからです。

「この人は、少し気に入らない人がいたら、うまくやっていけないのでは?」と協調性の面も心配されます。

人間関係で苦労した、でも自分なりにこう努力した・・という努力があればまだマシですが、それでも転職理由としては「この人、大丈夫か?」と不安にさせる可能性はあるのです。

■ 待遇面の不満もNG

「10年働いても、基本給が1円も上がらなかった」
「通勤手当が減額された」「賞与が年々下がっていった」
「残業代を一部しか払ってくれなかった」

たしかに、働く上でのモチベーションにかかわりますし、家庭を持っている方であれば深刻なのは理解できます。

ただ、待遇面が理由ですと、どんな理由であれ企業側は良い顔はしません。

仮にまっとうな権利であっても、「何か不満があったら、すぐ騒ぎ立てそうだ」というマイナスのイメージを持たれる可能性があるからです。

企業側は(仮に儲かっていても)経費を増やすことには、常に慎重になるものです。

待遇面で不満があっても、今の会社で我慢すべきというわけではありません。ただ、企業側に伝える転職理由としては「不適切」なのです。

■ 使わない方がいい言葉もある

仕事に対して「もっとこうしたい」という前向きな姿勢は企業でも喜ばれます。

ただ注意すべきは、「こういうことがやりたい」「やりがいが欲しい」という言葉は控えた方がよいということ。

企業は、あなたの自己満足のためにあるわけではないのです。

あくまで、「あなたが企業にどう貢献できるか」ということを伝えなければならないのです。本音ではやりたいことがあってもいいと思うのですが、表に出す場合には言い方を工夫しましょう。

言っていい転職理由とその例文

続いて、転職理由として伝えても問題がないものです。

■ 業界(会社)の将来に不安を感じた

もちろん、今働いている会社の愚痴でないことが大前提です。

~異業種への転職の場合~

「今働いている業界はやりがいもあります。ですが今のままでこの業界に働き続けることに不安を感じたからです。」

面接官:どうして?

「その理由は、~という市場環境の厳しさで、将来的には市場が縮小します。そうなった場合に、果たして5年後10年後の自分がそこにあるのか不安を感じました。」

~同業種への転職の場合~

「今働いている会社はやりがいもありますし、~という面では魅力的です。ですが今のままで働き続けることに不安を感じたからです。」

面接官:どうして?

「その理由は、~という会社の制度であったり、取引形態を考えると市場が縮小していくことが見えています。もちろん、私も今後は~すべきと上司に提言しましたが、会社の方針は変わりそうにありません。もし今のままで行った場合に、果たして5年後10年後の自分は大丈夫なのか?不安を感じました。」

気をつけたいのは、企業の愚痴や悪口にはならないこと、現状を変えるために努力したことを伝えることです。

当然、企業側の反論として、考えられるのは次の通りです。

面接官:「うちも将来どうなるかわからないよ?」

「いえ、御社の場合は~という事業があり、とても将来性があるものだと感じています。わたしは是非とも御社で、さらなる発展を目指すべく取り組んでいきたいのです。」

反論がきたら、逆に企業を「ほめてあげる」のです。そうすれば面接官も嫌な気はしないですし、熱意があると伝わります。

ただし、「安定」という言葉を使うのはNGです。「楽したくてうちの会社に来たいのか?」と勘繰られます。「新しい会社で、もっと頑張りたい」という意欲を伝えましょう。

■ 仕事内容に対する前向きな理由

(今の仕事が向いていない、ついていけない場合)

「今は~という仕事をしていますが、仕事を進めていくうちに、~という点よりも、~という仕事ならより自分の力を発揮できるのでは?と感じました。~という仕事に力を入れている御社でなら、貢献できると思ったからです。」

(今の仕事に物足りなさを感じている場合)

「今の仕事は~で、その仕事自体に不満はありませんが、専門的すぎるため業務の広がりが持てないところに疑問を感じました。活躍のフィールドを広げたいのです。御社でなら、会社に貢献できることも広がるのでは、と考えました。」

ポイントは、「もっといい仕事をするために、転職したい」という前向きな理由にすることです。

■ 「仕事が辛い」のは、場合によってはアリ

「転職理由はポジティブなことを伝える」というのがセオリーですが、場合によっては「あえてネガティブ」で言っていい場合もあります。

たとえば、「あまりに激務な会社で働いていた場合」。

「私は毎日24時まで仕事をしていました。人手があまりに足りていないので、会社側と交渉しましたが”我慢しろ”と要望を聞き入れてもらえませんでした。3年ほど頑張ってきましたが、さすがに将来的に考えると体力に不安を感じたため、転職を決意しました。」

「転職理由は、過酷な職場環境だった点です。土日にでることは年に何回かあるのは、やむを得ないと思っています。社会人である以上は、臨機応変に対処することも必要だと思います。ただ、休日出勤が慢性的になっていることに疑問を感じました。月に1回しか休めないときが半年も続いたので、さすがにこのままでは健康が心配のため、転職を考えることにしたのです。」

面接官も「そこまでひどい会社で働いていたのか・・」と感じるような内容であれば、ネガティブな理由でもマイナスにはとらえません。

過酷な環境で働いている期間も、1週間2週間ではあまり意味がありません。ある程度の期間を働いて耐えたというところが「この人は頑張れる人だ」という評価につながります。

もちろん「明らかなウソ」はいけませんし、入社してから問題になる可能性もあります。ただ、毎日23時だったのを24時に「脚色」するくらいならアリかなと、個人的には思います。

4.最終的に、何を伝えるべきか

転職理由を具体的に考える前に、「ゴール」を明確にしましょう。

●前向きな人間であること

●謙虚さも、持ち合わせている人間であること

「転職理由」を通じて、企業側に伝えるべきことはこの2つです。

その点を意識して、「企業に伝えていいことと悪いことを判断」したうえで、具体的に話すべき内容を練っていきましょう。

「言ってはいけない転職理由が、自分の『ホンネ』なんだけど、どうすればいい?」という方もいるかもしれません。

言ってよいことの中から、「自分の気持ちに近いもの」を選んで、自分の頭で組み立てて伝えることをおすすめします。

まったく思ってもいないようなことをしゃべると、ウソが面接官に見抜かれてしまいますので注意したいところです。

転職理由は「あなたが伝えたいこと、あなたの気持ちをわかってもらう」場ではありません。

あくまで、転職理由を通じて、面接官にいかに「マイナスのイメージ」を払拭させられるか?を意識しましょう。