「電力自由化で安くなるっていうけど、大した安くならない。やる意味ってあるの?」
2016年4月からはじまった、一般用家庭での電力自由化。
電気代は地元独占の電力会社が独占してましたが、もっと安い業者に切り替えられるというのが目玉でした。
ただ、実際にどれだけ安くなるかシミュレーションしてみても、全然安くない・・
「なんなんだ、この制度?」と私は思ってしまいました。国が勧める制度なのに、果たしてこんなもの誰がやるんだろう?という疑問がいまだにあります。
・電力自由化って、実際のところどこまで普及している?
・値段の面以外に、何かメリットがあったりする?
まさに”ツッコミどころ満載”のこの制度、果たしてどこまでの価値があるのか?調べてみました。
1.現状、電力自由化ってどこまで進んでいるの?
auやソフトバンク、東京ガスなど有名な企業が、異業種からの参入を表面して華々しいスタートを切った「電力自由化」。
ですが最近は、あまり電力自由化という言葉さえ耳にする機会が少なくなった気がします。
この記事を作成した最新の状況は2018年の2月。新電力に変更した件数は約643万件になりました。
数だけみると「ものすごい普及率」のように感じるかもしれませんが、実際は全体の10%ちょっとというのが現実なのです・・
しかも、2017年5月から2018年2月までで、わずか10万件の伸びしかありません。完全に”失速している”と言っても良いでしょう。
「最近、電力を安くしましょう」と耳に入らないのは、そもそも人気がなく宣伝も一段落してしまったというのが現状です。
『そこまでメリットを感じていない』から、電力会社の切り替えが「10人に1人」しか行われていないのです。
~ちなみに:シェア上位の会社~
●東京ガス
●KDDI
●大阪ガス
このあたりが、新電力内でのシェアを独占しており、三社合算では50%を超えています。
一般の人のアンケート結果は?
資源エネルギー庁が20~69才の一般男女にアンケートをとった結果、「半年以内に電気料金プランを変更したい」と考えている人はわずか5%でした。
100人いて、たった5人しか「前向きに検討していない」という世間の関心の薄さがよくわかる調査結果になっているようです。
●変更にメリットを感じない
●今までとおりの会社でよい
今にも後にも「特に検討はしない」という人は全体の40%と、無関心の度合いがかなり高いこともわかっています。
2.電力自由化のメリットはツッコミどころ満載!
そもそも、電力自由化って何のメリットがあるのでしょうか。
経済産業省が主体となって普及を進めている政策なのですが、経済産業省は「どんなメリットがある」と告知しているのでしょうか?
2016年(平成28年)4月1日以降は、電気の小売業への参入が全面自由化され、家庭や商店も含む全ての消費者が、電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになりました。
つまり、ライフスタイルや価値観に合わせ、電気の売り手やサービスを自由に選べるようになったのです。
国民が、電力会社を選べることで、さまざまなメリットがあることをウリにしています。
電力会社を選べるようになることで、以下の3つの”メリット”が生まれます。
●お得な料金プランが選べる
●新しいサービスが出てくる
●電気の地産地消ができる
実際に経済産業省のページを見ると、回りくどい表現が多いのですが、おおむね上記3つのことを言っています。
とはいえ、これらの言葉だけでは「なんのこっちゃ?」と思うかもしれませんので、具体的に見ていくことにしましょう。
お得な料金プランが選べる
これまでは電力の”使える契約アンペア数”以外で料金を変えることはできませんでしたが、もっと柔軟に料金プランが登場することになりました。
●夜8時から翌朝7時までの時間帯で割安・・昭和シェル
●基本料金ゼロ、完全従量制(使った分だけ)・・Looop
●基本料金は2倍、代わりに朝と夜の従量料金を無料・・HTBエナジー
「ライフスタイルに合わせた提案」ということで、一見お得に見えますが・・
電力をたくさん使う「大口」でしか安くならない
「思ったほど、料金が安くならない(5%程度)」
という問題もあり、ほとんど普及していません。
(Looopはシェアが1%)
すでに電気料金がいくら安くなるのかシミュレーションされた方も多いと思います。これらの「独自プラン」を採用しているところで見積もりしても、月に数百円レベルでしかお得にならないのも現実。
「いやいや、1年で6000円でも、10年で60000円お得になりますよ!」というセールストークもありますが、期間を長くするほど値段は高くなってオトクに見えるトリックなので注意しましょう。
『そもそもの電気料金のベースが安い』ので、いくらお得になるといっても大幅に安くすることができないのです。
節約が趣味の人には、よいかもしれません。
新しいサービスが出てくる
単に電気料金を安くするだけでなく、サービスと連携することでわたしたちへのメリットが増えるという取り組みもやっています。
●携帯・石油・ガス+電気代の「セット割引」
●省エネ診断サービス
電気とガス、電気と携帯電話などの組み合わせによる「セット割引」もあります。
au(KDDI)は「auでんき」という、電力を販売する事業体を立ち上げています。
スマホと電気をセットにすると割引というのはありませんが、auでんきの料金を「au WALLETプリペイドカード」として還元するサービスを実施しています。
ただ還元率は1~5%と低く、月5000円未満の電気料金なら「わずか50円」という微妙な設定です・・
その一方で、ソフトバンクも「ソフトバンクでんき」として電力を販売しています。基本料ゼロ円を売りにしていますが、正直他の電力販売会社と比べても大きな割引ではありません。
電気との「セット割」もあり、「おうちでんき」というサービス名で営業しています。スマホと電気の契約で、スマホ代が「月100円」、電気代が「毎月1%割引」になります。
おうちでんきも値段のメリットはほとんどないですし、途中解約すると電気の解約料も発生するなど、デメリットも大きいのです。
ちなみに現時点では、ドコモにそうした動きはありません。
電気もガスも、ともに自由化されて、会社を選べるようになりました。
電気だけでなく、ガスも同じ会社に契約することで割引額が大きくなるというメリットがあるようですが・・
現実は、電力やガスを、最安値の会社でそれぞれ契約する方が安いため、あえて「セット割」にするメリットがないのです。
東京ガス・中央セントラルガス・大阪ガス などいろいろなガス会社でセット契約を募集していますが、あえて申し込むほどのメリットがあるかどうかというと微妙です。
ENEOSや昭和シェル石油といった石油販売大手が、家庭向けの電力の販売に乗り出し、「セット割」を展開しています。
ENEOSの「ENEOSでんき」は、”電気の契約をする”&”ENEOSカードで支払いをする”という条件で、『1ℓ1円』の割引が適用になります。
一方、昭和シェル石油ではカードで給油をすると『1ℓ10円』の割引になります。毎回給油の際に30リットル入れる人は、300円の節約になります。
ただ、電気料金はやや割高なので、トータルで考えると必ずしもオトクとはいえません・・
電力会社によっては、「省エネのアドバイス、使用量の見える化」などの付加サービスを受けられます。
本格的なところですと「省エネアドバイザー」をつけて、直接相談窓口になっているところもあります。
ただ・・あくまで「プラスのオプション」という程度で、「このサービスが受けられるから契約しよう」というものでもありません。
省エネのアドバイスといっても、もともと工夫する余地が少ない電気ですので「ちょっと調べれば誰でも節約できる」レベルであることに変わりはありません。
また、どれだけ使用したのかの「使用量」がわかったところで、大幅に改善できるかというと難しいものがあります。
「価格では大きなメリットが出せないので、付加価値をつけてメリットを大きくしよう」という程度のものなのです・・。
電気の”地産地消”ができる
●遠く離れた「ふるさと」の電気を買える
●もよりの自治体の事業所から電気を買って地域貢献
電力自由化によって、「地元のために」なる点も、政府は強調しています。
無理にこじつけている印象がしないでもないですが・・仮に地元の電気を買ったところで、一個人が使う電気の量は微々たるものです。
「ふるさと納税」で、直接故郷にお金をおさめた方が地元のためになるでしょう。
個人よりも、市町村の公共施設に安い電力を送ることで「市町村の財政を抑える」というメリットはあるかもしれません。
3.結局、電力会社を切り替えるべき?辞めるべき?
●電力自由化で「値段が安くなるメリット」はほとんどない。
●ガスや携帯などとのセット割も、わずかなもの。
●省エネ診断、セット割などのサービスも直接のメリットがほとんどない
●地産地消するなら「ふるさと納税」の方がはるかにマシ
結局、国が主導になって行っていますが、一般消費者の冷ややかな目を変えられるほどメリットがないのも事実です。
ガス会社や携帯会社も、電力を買い取ることで自社のインフラ整備の充実が主目的であって、個人に売買して利益をあげていくという所までは見越していないのも現状なのです。
「毎月の支出を、できるだけ減らしたい」のであれば、ガスや保険などもっと「効率がよいもの」を追い求めることをオススメします。