着物を着た(脱いだ)後に、すべきお手入れは?
着物を着ておでかけして、帰ってきた時にやっておくべきお手入れを紹介します。
面倒かもしれませんが、こまめにやっておくことで着物は長持ちすることができます。
汚れをとる
まずは着物の表地や裏地も含めた「汚れチェック」を、しっかりしましょう。特に袖口や襟周りは汚れがつきやすいので注意を。
階段や廊下を歩くことが多い場合は、裾のチェックも忘れずに。
・食べこぼし
・皮脂汚れ、シミ、ファンデーションの汚れ
・汗じみ
・ホコリ
などがないかどうか、目視しましょう。
ブラシで汚れを落とす
目立つような汚れがない場合でも、着物用のブラシをさっとかけておきましょう。
注意したいのは、ブラシをかける方向です。肩口から裾に一直線に払ってきます。
裾から肩にもどると、ホコリが再び着物に付着してしまうので注意して下さい。
陰干しは必須
真夏でなくとも、密着度が高く蒸れやすい下着を着ていると、体から汗や湿気がでてしまい着物が吸い込んでしまいます。
湿気をとるために、着物を専用のハンガーなどにかけて、翌日まで一晩陰干しして乾かしましょう。汗をたっぷりかいてしまった場合は、早めに「汗抜き」もしておきましょう。
着物を脱いだら、すぐに着物専用のハンガーにかけて干しましょう。場所は直射日光のあたらない風通しのいいところを選びます。
着物ハンガーにかけたら、次は全体を細長く丸めたタオルなどで軽く叩くようにしてほこりを払います。払いながら各部を観察して、シミや汚れ、目立つシワなどがないかを確認していきます。
たたむときは「たとう紙」を使う
着物のたたみ方は決まっていますが、仕上げには「たとう紙(和紙)」でしっかり包んであげましょう。そうすることで、中に湿気がこもらず雑菌やカビを防ぐことができます。
長襦袢も着物と同じように干します。半衿は、ひどく汚れていなければ付けたままで構いません。気になるようならベンジンでさっと拭いておきます。
そのほか、帯や帯揚げ、伊達締めなどの小物も同様に干しましょう。着物専用ではなく普通のハンガーにかけても大丈夫ですが、洗濯用のハンガーに洗濯ばさみで吊るすのはNGです。
形が崩れるうえに、素材によっては洗濯ばさみの跡がついてしまうこともあります。
肌襦袢や裾よけ、ひもなどの洗えるものはそのまま洗濯機へ。足袋は手洗いで洗います。
着物の下着類のお手入れ
続いて、着物の中に着る物についてです。
●肌襦袢・・腰から上に着るもの。素肌の上に着るもの。下着替わりで、五分~七分袖
●裾よけ・・肌襦袢とセットで、スカートのように履くもの
●長襦袢・・着物と同じ丈の、着物の下に着る長いジバン。肌襦袢の上に着る物。白以外にもいろいろな色がある
肌襦袢のお手入れ
肌襦袢は普通に洗濯できます。普段の下着を洗う時と同じように洗濯ネットに入れて洗い、干します。乾いたらシワを伸ばし、きちんとたたんでしまいましょう。
裾よけもほぼ同様に洗濯できますが、素材が綿からシルクまでさまざまなので、初めて洗う時には品質表示をよく確認しましょう。
肌襦袢も裾よけも、外に見えないとはいえ着心地にかかわる大事なアイテム。たとえ外から見えなくても、きれいな下着は気分も上昇させてくれます。丁寧にケアしましょう。
しまう時には肌襦袢と裾よけをひとまとめにセットしておくと、次に着る時に便利です。
襦袢のお手入れ
まずは襦袢に縫い付けてある「半衿(はんえり)」を外して、汚れていたら衿芯を外して洗いましょう。一見汚れがついているように見えなくても、時間が立つと見えてくる汚れもあるので注意が必要です。
半衿(はんえり)の洗い方
1.洗面器にお湯を入れ、汚れている部分に直接固形石鹸をつけます。
2.歯ブラシの毛先の部分で、適度な力加減でこすります。
3.あとはすすいで、アイロンがけして完成です。
あとは通常の着物と同様、
・陰干しで湿気対策
・畳むときは「たとう紙」に入れる
ことを、徹底しましょう。
長襦袢のお手入れ
長襦袢は家庭では洗濯しないものですが、最近はポリエステルなど気軽に洗える素材の長襦袢も増えてきました。デイリーに着物を着たい方には、とても便利なアイテムです。
長襦袢のたたみ方は、着物とは少し違います。まず長襦袢を広げて着る時と同じように衿をあわせ、身ごろの左右四分の一のところから縦に折ります。
左右の脇線を外側から内側に向かって、真ん中で合うように折るのが目安です。袖は袖付けで折り返し、脇線に合わせるようにしてもう一度折ります。
そのあと縦のサイズをたとう紙に合うように折って、しまいます。
使い終わった小物類のお手入れ
帯のお手入れ
食べこぼしなど、意外と汚れがつきやすい場所でもあり、目立たないので放置しやすい場所なので注意を。
前帯や胴回りを重点的に見てケアしましょう。シミなどの目立つ汚れがない場合でも、ベルベット布などでホコリを落としましょう。
あとは着物同様、陰干しをしてから翌日に収納しましょう。長期間しようしない場合は、たとう紙に包んで湿気を防ぐことをおすすめします。
折りジワがついていた場合は放置せず、布をあててガーゼタイプのハンカチをのせ、上からアイロンがけしてしわを伸ばしておきましょう。帯揚も同様です。
帯締は結んで無くさないように保管しておきましょう。
帯はほどいたらすぐ手でシワを伸ばし、ハンガーにかけて風を通します。汚れがあった場合、気軽にしめられる普段使いの帯なら、水をつけたタオルなどで軽く叩いて落とします。
結んでいる以上シワはどうしてもできるものです。シワに対しては、まずは上から手で押して形を整えるようにして伸ばします。それでも直らないシワはアイロンで伸ばします。
必ず当て布をして、素材に合った温度でアイロンをかけましょう。ただし、特殊な織りのものや金糸銀糸のししゅうがあるものなど、自宅でケアするのが難しいものは専門店にまかせたほうが無難です。
大切な帯をだめにしないために、干しておくだけで解消できないトラブルは、専門店に相談するようにしましょう。
足袋のお手入れ
着物ばかりに目がいきがちですが、汚れがつきやすく、外側がむき出しになっているので汚れやすいのが足袋です。
白い靴下をはいているのと同じですので、こまめにお洗濯をしましょう。汚れがひどい場合は、あらかじめ手洗いで部分洗いすることをおすすめします。
足袋は手洗いで洗います。中性洗剤を溶かしたぬるま湯に20~30分くらいつけて、歯ブラシなどで汚れをこすり落とします。その後はよくすすいで、横方向・縦方向と引っ張って形を整え、洗濯ものハンガーなどに吊るして陰干しします。
足元は汚れやすく、また汚れが目立つところ。白い足袋を白いまま履き続けるには、日ごろのケアがとても大事です。こまめにお手入れしましょう。
普通に洗濯機をかければいいですが、干して乾かすときにシワが目立つならアイロンがけもしましょう。
雨に濡れた草履の場合は、タオルなどで鼻緒や側面、前壺周りなどの水分をふきとり、新聞紙を敷いて一晩おいて湿気を取り除きましょう。
履物(草履)のお手入れ
草履(ぞうり)も足袋同様、汚れが付きやすいものです。
脱いだ後は、かたく絞ったタオルなどで内側をふいておきます。裏側も見て、ひどい汚れがないかチェック。鼻緒を軽く引いて整え、よく乾かしてからしまいます。
草履用のシューキーパーが市販されていますので、保管時にはそれを使うのもよい方法です。使ったあとは玄関の下駄箱に収納せず、着物同様「陰干し」をして湿気をとってから収納しましょう。
台や鼻緒の部分についた見えないホコリがあるので、布で乾拭きすると良いです。
保管するときは、できればスニーカーやシューズと一緒にせず、専用の箱に入れて乾燥材を入れておくと良い状態で保管できます。
着物の皮脂・シミ・汗取りの具体的なやり方
皮脂汚れはシミの元。見つけ次第、すぐに対処が必要です。具体的には家にあるベンジン(衣類用のシミ抜き剤)とガーゼタイプのハンカチです。
1.汚れた場所の下に、タオルをあてる。
2.ハンカチにベンジンをしみこませます。
3.汚れの上から、ハンカチでとんとんと叩いていきます。
4.輪ジミを防ぐために、汚れの周囲もたたいておきます。
皮脂だけでなく、油っぽい食べ物が跳ねた時も同じようにベンジンとガーゼハンカチを使って落としていきましょう。
シミ取りの具体的なやり方
シミがあった時は、ベンジンを使って落とします。着物を広げ、下にタオルを敷いて、ベンジンをふくませたコットンで軽く叩くようにして汚れを浮き上がらせ、ふき取ります。
場合によっては、ベンジンでかえってシミが悪化することもあります。特に素材がわからない古着などは要注意。下前や帯で隠れる部分など目につかない箇所でテストしてみるのも忘れずに。
とはいえ、自宅でできるシミ抜きのケアはあくまでも応急処置です。本当に大切な着物や汚れがひどいものは、無理せずシミ抜きの専門店へ持っていきましょう。
化粧品の汚れ、食品の飛び跳ねなど、汚れの種類もその対処法もさまざま。洋服と同じように、汚れの種類と生地の素材をよく確認してそれぞれに合った対策をすることが大事です。
その他
着物周りのこまごまとしたものも忘れずにお手入れしましょう。きちんとお手入れしておけば、次に着る時に楽に使えます。
半衿は、どんな素材であっても基本的に自宅で洗うことができます。普段着の着物用の気軽な素材なら、ネットに入れてそのまま洗濯機へ。
正絹などデリケートな素材は、おしゃれ着洗い用の洗剤で優しく手洗いします。基本は漬け置き洗いで、こすったりもんだりするのは避けましょう。
さらに万全を期するなら、シルク専用の洗剤を使います。洗ったらよくすすぎ、形がくずれないように生乾きのうちに当て布をあててアイロンをかけます。
そのまま干し、よく風が通ったらたたんでしまいます。ししゅうがある場合は、水洗いすることによって縮んでつれてしまうことがあるので無理に自宅で洗わず専門店にお願いします。
帯揚げは素材によっては洗濯できます。もともと表にあまり出ないものなので、汚れも少なく、洗濯の必要はそれほどないのですが、気になるようなら手洗いで洗濯するのも一つの手です。
ただしシボのあるものは、水でシボがとれてしまうので自宅での洗濯は避けましょう。着こなしのアクセントになる帯締めも大切に保管したいものです。
特に両端に房がある帯締めは、しまう時のケアが大切です。乾いた布で全体を軽く拭き、やかんの口から出る蒸気などを利用して房の部分にスチームを当てて整えた後、紙でくるくると巻いてテープで留めて収納します。
こうすると次に出した時も房がきれいで、気持ちよく締められます。
汗とりのやり方
そのまま乾くまで放置しがちですが、しっかり応急処置をすることで汗が落ちやすくなります。
1.汚れの下に、乾いたタオルを敷く
2.水に濡らしたタオルを、汚れの上から叩いていく
3.ドライヤーの温風を使って素早く乾かします。(水ジミに注意)
浴衣のあせとり
素肌にまとう浴衣は、どうしても汗が気になるもの。綿やポリエステルなど洗える素材であれば、丸洗いするとすっきり清潔に着られます。
洗濯機でネットに入れて洗うか、小さくたたんでぬるま湯で手洗いします。もみ洗い、つまみ洗いは生地を傷めるので避けましょう。
優しく押すようにして洗うのがおすすめです。どちらの場合も初めて洗う時は、色落ちしないか、目立たないところに水をつけて確認します。
丸洗いするほどではないけど気になる、という時は、水でかたくしぼった布で全体を叩くようにして湿らせ、そのまま一晩干しておきます。
着物の正しいたたみ方
本だたみの場合
一般的な着物(長着(ながぎ)や羽織(はおり))のたたみ方です。女物・男物・単衣(ひとえ)は本だたみをします。
短期保管、長期保管の収納でも定番のたたみ方です。
縫い目と折り目に沿ってたたむことで、余計な折り目やシワを防ぐことができます。
▼▼本だたみのやり方(動画)▼▼
袖だたみ
一時的にたたむ「仮のたたみ方」にあたります。着物を広げるスペースがなかったり、すぐに着る場面などで重宝します。
▼▼袖たたみのやり方(動画)▼▼
夜着(よぎ)だたみ
刺繍(ししゅう)や箔、紋などの豪華な模様が入った着物の場合は、模様を傷めないようにこのたたみ方をします。
▼▼夜着(よぎ)だたみのやり方(動画)▼▼
長襦袢のたたみ方
露出が少ない部分ですが、きれいにたたんでおくことで、着付けがスムーズになります。
▼▼長襦袢のたたみ方(動画)▼▼
袋帯のたたみ方
▼▼袋帯のたたみ方(動画)▼▼
名古屋帯のたたみ方
▼▼名古屋帯のたたみ方(動画)▼▼