自分の親が余命宣告を受けてしまった。今からやっておかなければならないことは、何だろう。
あれだけ元気だった親に、死が迫っていることは簡単には受け入れられないものです。
悲しくて悲しくて、でもどうすることもできないもどかしさと、少しでも一緒に居たいという気持ち。
それでも、来たる日に向けて準備を進めていかなければならないのが、人生の残酷なところ。
「生きているうちに、済ませておいた方がよい手続きは何?」
「その日を迎えるまで、どんな心構えをするべき?」
気持ちの整理がつかないかもしれませんが、それでも出来ることは何なのか一緒に考えていきましょう。
まず、何を考えなければならないか
具体的に、どういったことを考える必要があるのでしょうか。
●加入している保険の確認
●預金の確認、引き出し
●財産の確認、相続の必要性
●自宅の身の回り品の整理
●親戚や親の友人への連絡
●葬儀の事前準備
といったことが、考えられます。「今はそれどころじゃない」という気持ちもわかりますが、いざという時に困らないように準備できることはしておくべきなのです。
もちろん、病床で苦しんでいるところに「財産は~ 遺言書は~」なんと不謹慎なことを、本人に聞くのもいかがなものかと思います。何より本人が可哀想です。
できるだけ本人の立場を考えた上で、滞りなく手続きを進めていきたいものです。
両親のうちのどちらかが健在であれば、手続きは少なくても問題ないかもしれません。
ただ、父親(母親)が亡くなれば二人とも他界するなら、一通りのことはやらなければなりません。
準備その1:財産や持ち物の確認
●加入している保険の確認
●預金の確認、引き出し
●財産の確認、相続の必要性
加入している保険の確認
「今から保険金の確認なんて、不謹慎・・」と思うかもしれませんが、違います。
親御さんの保険が「リビングニーズ特約」に加入しているかどうかを、確認しておくためです。
~リビングニーズ特約とは~
リビングニーズ特約とは、余命6か月以内と判断された場合に、本来は亡くなったときに支払われる死亡保険金の一部または全部を生前に受け取ることができる特約です。
この特約によって生前に受け取った給付金は、医療費のほかにも自由に使うことができるため、余命宣告という事態においてとても心強い特約といえます。
「余命宣告」を受けているのが明らかな場合、まだ生きている間に保険金の給付を受け取れます。
親御さんの治療費にあてたり、好きな所に連れて行ってあげたりと「本人のため」に活用できるのです。大手の生保に加入しているのであれば、この特約が付加されている可能性は高いです。
亡くなった時にでる給付金を「前払い」しているので、”多くもらえるわけではない”ことに注意しましょう。
保険の話を本人にしてしまうと、あらぬ誤解を招く可能性もゼロではありません。
できれば自宅から、保険加入に関する書類を探しておくことをオススメします。
●保険証券
●ご契約内容のお知らせ ※定期的に保険会社から送られてくる
のいずれかがあれば、保険の種類がわかり特約の確認ができます。
もしくは、
●生命保険料控除証明書
●預金通帳での引き落とし履歴
があれば、生命保険会社の特定ができますので、直接問い合わせてみましょう。
ちなみに、亡くなった後に受け取る死亡保険金は、「受取人」に指定した人しか受け取ることができません。
預金の確認、引き出し
生前に持っていた財産を確認するためにも、必要なです。
保険についてはご本人に聞きにくくても、預金については「支払う医療費がある」などといい教えてもらう必要があるでしょう。
ちなみに、万が一亡くなった後は、本人の銀行口座は凍結してしまいます。
遺族が引き出すには、相続人すべての実印や戸籍謄本が必要など、かなり面倒な手続きが必要になります。
生前に、少しずつおろしておくのがベターです。ただし、兄弟がいる場合は事前に許可をもらうなどしないと、後々のトラブルに発展するかもしれませんので注意を。
身の回り品の整理
まだご両親のどちらかが健康な場合は、必要ありません。
ただ、父親(もしくは母親)がすでに他界している場合は、自宅の身の回り品の整理もしておくのが望ましいです。
通常は、亡くなったあとに「遺品整理」という形で行いますが「生前整理」をしてくれる業者もあります。
●必要な物品の仕訳
●不用品の処分
●部屋の清掃など
保険層や身分証、クレジットカードなどの財産類もこの際に一緒に探すことができます。ご本人の残したお金を把握するためにも有効です。
準備その2:葬儀・相続について
「どこに葬儀をお願いするか」という問題もあります。
●葬儀会社
●お寺さん(仏教の場合)
それなりに信仰がある家であれば、法要などで家に来てもらう菩提寺(ぼだいじ)にお願いすることになります。
たいていはどこかの寺院の檀家さんになっているので、知らなければ早いうちに親戚にでも聞いておきましょう。
〇菩提寺(ぼだいじ)・・先祖代々に渡り供養や法要をしてもらっているお寺
〇檀家・・特定の寺に所属して寺を支援(お布施など)する家
よほどの都会でなければ、すでに頼んだことのある地元の葬儀会社があるはずです。
ただ、葬儀会社で頼むと費用がそれなりにかかりますので、お金をかけずに「家族葬」で安く済ませたいという場合は、「小さなお葬式」という業者に頼んでみるのも一つです。
「今のうちから、お金のことは考えたくもない」という気持ちはわかります。
ただ、あらかじめどういう風に財産が動くのかを把握しておくことで、亡くなった後で混乱しているときに誤った判断をしないためにも知っておいて損はないでしょう。
遺産は基本的に「法定相続人」(法律で定められた、財産を相続する人のこと)に沿って支払われます。
父(母)がなくなった場合、配偶者と子供が2分の1の相続と決まっています。ご両親ともなくなった場合は、子供がすべての財産を相続します。
兄弟がいれば、兄弟の数だけ均等に割ることになります。3人兄弟なら3等分です。
「相続税」ですが、5000 万円以下の遺産でればかかりません。ご両親が資産家でなければ、税金の心配はしなくても大丈夫です。
よく「遺産相続でもめる」という話がテレビでもやっていますが、どうして起こるのでしょうか?
●現金を均等に分けるのに、文句をいう兄弟がいる
●不動産だと均等にわけられず、処理にもめる
というパターンが多いのです。
まだお母さんが健在なら、こうした問題は起こりませんが、ご両親とも他界する場合に兄弟同士でもめてしまうのです。
早い段階で遺産を確認し、兄弟と話し合っておくのがよいのかもしれません。
~親戚や友人への連絡も忘れずに~
お父さん(お母さん)と仲の良かった友人や、親戚にも今の状況を伝えておきましょう。
悲しみで周りのことが見えなくなりがちですが、周りの近しい人にも「覚悟」してもらうことも大事なことです。
準備その3:心の整理・準備について
死後困らないように手続きを進めることも大事ですが、「気持ちの整理」がなかなかつかない方も多いかもしれません。
最後の時まで、どういった気持ちで親と向き合っていけばよいのでしょうか。
もちろん、答えが一つに決まっているわけではありませんし、誰かに「こうして」と言われるものでもないでしょう。
でも、少しだけ言わせてもらえるのであれば
●ガマンしなくていい、泣けるだけ泣く。
●苦しい気持ちを、誰かにぶつけて頼る。
決して自分の中にため込まず、外に出してほしいなと思います。
もちろん本人の前で泣き崩れてはいけません、何より「一番つらいのは本人」なのですから。
でも、一人になったらあふれる感情を抑えなくてもいいのではないでしょうか。
悲しいのは仕方がない、親の前では前向きに、でも外では思いっきり泣いて「あるがままの感情」を出していく。
そうすることで、ほんの少しでも自分の気持ちを落ち着けて、はじめて前を向けるのではないでしょうか。
また、辛いときは人に頼ったり、甘えたり、時にはあたってもいいじゃないですか。一人で抱え込むのはつらいものです。
気丈にふるまって、だれにも迷惑や心配をかけないようにしても、ご自身が倒れてしまっては親に心配をかけてしまいます。
やるべきことはやれる範囲でやりつつ、「心の整理」をしながら「その時」が来るのを待てるように。